「中仕掛けの作り方が分からない」「太くなりすぎた・細すぎる」「すぐほどけてしまう」——弓道を始めたばかりの方が最初に直面する難関の一つが「中仕掛け(なかじかけ)」の作成です。弓道の道具の中で、中仕掛けは見た目は小さな部品ながら、矢の安定した飛行と的中精度に直結する重要なパーツです。適切に作られた中仕掛けは矢を確実に保持し、離れのタイミングで矢が正確に放たれる基盤となります。本記事では、中仕掛けの基礎知識から正しい作り方の手順・材料の選び方・太さの基準・よくある失敗と対処法・弦輪の作り方まで、すべてを初心者にも分かるよう徹底解説します。
中仕掛けとは何か——役割と重要性
中仕掛け(なかじかけ)とは、弓の弦(つる)の中央付近に巻き付けられた補強材のことです。矢の筈(はず)が乗る部分に「山型の膨らみ」を作ることで、矢を弦に確実に保持し、離れの瞬間に矢が弦から外れるタイミングを安定させる役割を持ちます。
中仕掛けが適切に作られていないと、以下のような問題が発生します。
| 問題 | 原因 | 影響 |
|---|---|---|
| 矢が弦から外れやすい(暴発) | 中仕掛けが細すぎる・位置がズレている | 的中率の低下・危険な暴発 |
| 矢が弦に引っかかる(失矢) | 中仕掛けが太すぎる | 矢飛びの乱れ・的外れ |
| 矢の飛行方向がブレる | 中仕掛けの形が左右非対称 | 矢筋が不安定・的中率の低下 |
| 中仕掛けがすぐほどける | 巻き方が甘い・材料が合っていない | 稽古中断・弦の損耗加速 |
中仕掛けに使う材料の選び方
中仕掛けを作るための材料にはいくつかの選択肢があります。それぞれの特徴を理解した上で、自分の弦・矢の筈に合った材料を選びましょう。
中仕掛けの適切な太さと長さの基準
中仕掛けの太さは「矢の筈の溝幅」に合わせることが基本です。筈の溝に中仕掛けを乗せたとき、「矢がスッと乗るが、振っても落ちない」程度の太さが理想です。
適切な太さの確認方法
①弦に中仕掛けを作った後、矢の筈を弦の矢番え位置に置く。
②矢を軽く上下に振っても落ちない(保持力あり)
③矢を引っ張ると「スッ」と外せる(引っかかりなし)
④矢番えした状態で弓を地面と水平にしても矢が落ちない
この4点を満たす太さが理想的な中仕掛けです。細すぎると②が満たされず、太すぎると③が満たされません。
中仕掛けの長さ(巻き幅)の基準
中仕掛けの巻き幅(長さ)は、弓道の団体・道場によって多少の違いがありますが、一般的には「矢の筈が乗る部分の直上・直下それぞれ5〜10mm程度」が基準です。合計で約1〜2cm程度の巻き幅が標準的です。
巻き幅が短すぎると中仕掛けが弦から外れやすく、長すぎると弦の反発に影響する場合があります。師範・先輩の中仕掛けを観察し、自分の弦の太さ・矢の筈に合った長さを見極めましょう。
中仕掛けの作り方——手順を詳しく解説
ここからは中仕掛けの具体的な作り方を手順ごとに解説します。初めて作る場合は、先輩や師範に実際に見せてもらいながら覚えるのが最も確実ですが、本記事の手順を参考にしながら実践することで基本は習得できます。
必要なもの
- 弦(中仕掛けを作る弦)
- 中仕掛け用麻糸(または同等品)
- 木工用ボンド(または弓道用の糊)
- はさみ
- ライター(または爪楊枝)
弦に矢の筈が乗る正しい位置(矢番え位置)を確認します。一般的には弦の中央付近で、弓の弓把(弦と弓の間の距離)が適切な位置に筈が来る箇所が矢番え位置です。師範に確認するか、既存の弦の中仕掛けを参考に位置を決めます。
麻糸の先端(20〜30cm程度)を弦の上に揃え、親指・人差し指で押さえます。糸の先端を弦と並行に伸ばした状態で固定することが大切です。この部分が後に巻き込まれて、中仕掛けの起点となります。
固定した先端を押さえながら、麻糸のボビン(糸巻き)側で弦の上から下へ、きつくかつ均等に巻いていきます。巻く向きは「矢番え位置の上から始め、下方向に巻いていく(または下から上へ)」のどちらでも可能ですが、自分が巻きやすい方向で統一することが重要です。巻くときは力を均等にかけ、各巻きが隙間なく密着するように心がけます。
矢番え位置を中心に、上下それぞれ5〜10mm程度まで均等に巻きます。巻いている途中で「山(ふくらみ)」が均等に形成されているかを確認しながら進めます。片側だけ高くなっていたり、巻きが緩んでいたりする場合は、その部分をやり直すか修正します。
巻き終わりの糸を弦の後ろ側で折り返し、最後の数巻きに糸の末端をくぐらせて固定します(いわゆる「玉結び」的な処理)。糸がほどけないようにしっかり締め込んだ後、はさみで余分な糸を切ります。
木工用ボンドを中仕掛けの表面全体に薄く塗り、乾燥させます(30分〜1時間程度)。ボンドが乾くと麻糸が固まり、巻きがほどけにくくなります。ただしボンドを塗りすぎると中仕掛けが硬くなりすぎ、矢の筈が引っかかる原因になるため、薄く均等に塗ることが重要です。
ボンドが完全に乾いた後、矢の筈を乗せて太さを確認します。細すぎる場合は上から追加で麻糸を巻いてボンドで固めます。太すぎる場合は爪楊枝やサンドペーパーで少しずつ削って調整します。最終確認は「矢を乗せて振っても落ちず、引っ張ると外せる」状態が基準です。
弦輪(つるわ)の作り方
弦を弓にかける際に使う「弦輪(つるわ)」も、中仕掛けと並んで自作する必要がある弓道の基本技術です。弦輪は弦の端にある輪(ループ)で、弓の弓末(末弭・本弭)に引っかけることで弦を弓に張る役割を持ちます。
弦輪の種類
弦輪の作り方(末弭側)
弦の末端から15〜20cm程度を折り返して二重にし、輪を形成します。輪の大きさは弓の本弭(うらはず部分)に合わせて調整します。
折り返した部分(二重になっている根元から5〜8cm程度)に麻糸をきつく均等に巻いていきます。中仕掛けの巻き方と同様に、隙間なく密着させながら巻きます。
巻き終わりの処理をして糸がほどけないようにし、ボンドを薄く塗って乾燥させます。乾燥後に弓の本弭に引っかけてみて、サイズが合っているかを確認します。
弦輪の強度確認は必須
弦輪は弓を張る際に非常に大きな張力がかかります。巻きが甘い・ボンドが十分でないと、弦を張った瞬間に弦輪が外れ・切れる危険があります。初めて作った弦輪は、師範・経験者に必ず確認してもらい、「安全に使用できる品質か」を判断してもらってください。弦輪の破損は弓の破損・怪我につながる可能性があります。
中仕掛けのよくある失敗と対処法
| 失敗・問題 | 原因 | 対処法 |
|---|---|---|
| 中仕掛けがすぐほどける | 巻き方が甘い・ボンドが少ない・ボンドが乾く前に使用 | 巻き直し+ボンドを充分に塗り直す。乾燥時間を必ず守る(最低30分) |
| 矢が弦から落ちやすい(保持力不足) | 中仕掛けが細すぎる | 上から追加の麻糸を巻き、太さを増す。筈の溝幅と合っているか確認 |
| 矢番えが硬い(引っかかる) | 中仕掛けが太すぎる | 爪楊枝や細かいサンドペーパーで表面を少しずつ削り、太さを調整 |
| 中仕掛けの形が崩れた(片側が高い) | 巻きが均一でない・弦が捻れている | 一度全部解いて巻き直す。弦の捻れを直してから再作業 |
| 使用中に中仕掛けが滑る(位置がずれる) | 弦に対してボンドの付着が不十分 | 中仕掛けを解いて弦の表面に軽くやすりをかけてから(摩擦増加)再作業 |
| 中仕掛けの位置が矢番え位置とずれている | 最初の位置決めが不正確 | 解いて位置を確認してから作り直す。弓に弦を張った状態で矢を番えて正確な位置を確認する |
中仕掛けのメンテナンスと交換タイミング
中仕掛けは消耗品です。使い続けると摩耗・ほつれが生じ、保持力が落ちてきます。以下のサインが出たら中仕掛けを作り直しましょう。
- 麻糸がほつれてきた・繊維がばらけてきた
- 矢番えした矢がすぐに落ちるようになった
- 中仕掛けの山がつぶれて平らになった
- 弦のその部分が変色・硬化してきた
- 弦輪の太さが明らかに変化した(細くなった・太くなった)
中仕掛けの交換頻度は使用量・環境によって異なりますが、概ね「弦1本の寿命(500〜2,000射程度)」に合わせて交換するのが目安です。弦を交換するタイミングで中仕掛けも一緒に作り直す習慣をつけておくと管理がしやすいです。
正しい道具管理が的中率を安定させる。
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