「中仕掛けの作り方が分からない」「太くなりすぎた・細すぎる」「すぐほどけてしまう」——弓道を始めたばかりの方が最初に直面する難関の一つが「中仕掛け(なかじかけ)」の作成です。弓道の道具の中で、中仕掛けは見た目は小さな部品ながら、矢の安定した飛行と的中精度に直結する重要なパーツです。適切に作られた中仕掛けは矢を確実に保持し、離れのタイミングで矢が正確に放たれる基盤となります。本記事では、中仕掛けの基礎知識から正しい作り方の手順・材料の選び方・太さの基準・よくある失敗と対処法・弦輪の作り方まで、すべてを初心者にも分かるよう徹底解説します。

目次

    中仕掛けとは何か——役割と重要性

    中仕掛け(なかじかけ)とは、弓の弦(つる)の中央付近に巻き付けられた補強材のことです。矢の筈(はず)が乗る部分に「山型の膨らみ」を作ることで、矢を弦に確実に保持し、離れの瞬間に矢が弦から外れるタイミングを安定させる役割を持ちます。

    中仕掛けが適切に作られていないと、以下のような問題が発生します。

    問題 原因 影響
    矢が弦から外れやすい(暴発) 中仕掛けが細すぎる・位置がズレている 的中率の低下・危険な暴発
    矢が弦に引っかかる(失矢) 中仕掛けが太すぎる 矢飛びの乱れ・的外れ
    矢の飛行方向がブレる 中仕掛けの形が左右非対称 矢筋が不安定・的中率の低下
    中仕掛けがすぐほどける 巻き方が甘い・材料が合っていない 稽古中断・弦の損耗加速

    中仕掛けに使う材料の選び方

    中仕掛けを作るための材料にはいくつかの選択肢があります。それぞれの特徴を理解した上で、自分の弦・矢の筈に合った材料を選びましょう。

    麻糸(あさいと)
    伝統的な中仕掛け材料。適度な硬さと摩擦があり、弦に巻いたときに丈夫な山を作りやすい。天然素材のため湿気に弱く、濡れると緩みやすい欠点がある。弦が麻弦の場合は相性がよい。弓具店で「中仕掛け麻糸」として販売されている。
    麻糸(ポリエステル混紡)
    純粋な麻糸よりも耐久性・耐湿性が向上した改良版。現代の弓道家の多くが使用する標準的な選択肢。弓具店で広く入手でき、価格も手頃。雨天・湿気の多い環境でも比較的安定している。
    既製品の中仕掛け
    あらかじめ弦に取り付けられた状態で販売される弦(中仕掛け付き弦)も市販されている。作り方を覚えていない初心者には便利。ただし太さの微調整ができないため、筈のサイズに合わない場合は自作が必要。
    グラス弦用の補強材
    合成弦(ファストフライト・ダイニーマなど)の場合、天然麻糸では摩擦が不足することがある。専用の補強テープ・合成繊維糸を使用する場合もある。使用する弦の素材に合わせた材料選択が重要。

    中仕掛けの適切な太さと長さの基準

    中仕掛けの太さは「矢の筈の溝幅」に合わせることが基本です。筈の溝に中仕掛けを乗せたとき、「矢がスッと乗るが、振っても落ちない」程度の太さが理想です。

    適切な太さの確認方法
    ①弦に中仕掛けを作った後、矢の筈を弦の矢番え位置に置く。
    ②矢を軽く上下に振っても落ちない(保持力あり)
    ③矢を引っ張ると「スッ」と外せる(引っかかりなし)
    ④矢番えした状態で弓を地面と水平にしても矢が落ちない
    この4点を満たす太さが理想的な中仕掛けです。細すぎると②が満たされず、太すぎると③が満たされません。

    中仕掛けの長さ(巻き幅)の基準

    中仕掛けの巻き幅(長さ)は、弓道の団体・道場によって多少の違いがありますが、一般的には「矢の筈が乗る部分の直上・直下それぞれ5〜10mm程度」が基準です。合計で約1〜2cm程度の巻き幅が標準的です。

    巻き幅が短すぎると中仕掛けが弦から外れやすく、長すぎると弦の反発に影響する場合があります。師範・先輩の中仕掛けを観察し、自分の弦の太さ・矢の筈に合った長さを見極めましょう。

    中仕掛けの作り方——手順を詳しく解説

    ここからは中仕掛けの具体的な作り方を手順ごとに解説します。初めて作る場合は、先輩や師範に実際に見せてもらいながら覚えるのが最も確実ですが、本記事の手順を参考にしながら実践することで基本は習得できます。

    必要なもの

    • 弦(中仕掛けを作る弦)
    • 中仕掛け用麻糸(または同等品)
    • 木工用ボンド(または弓道用の糊)
    • はさみ
    • ライター(または爪楊枝)
    1
    矢番え位置を確認する

    弦に矢の筈が乗る正しい位置(矢番え位置)を確認します。一般的には弦の中央付近で、弓の弓把(弦と弓の間の距離)が適切な位置に筈が来る箇所が矢番え位置です。師範に確認するか、既存の弦の中仕掛けを参考に位置を決めます。

    2
    麻糸の先端を弦に固定する

    麻糸の先端(20〜30cm程度)を弦の上に揃え、親指・人差し指で押さえます。糸の先端を弦と並行に伸ばした状態で固定することが大切です。この部分が後に巻き込まれて、中仕掛けの起点となります。

    3
    麻糸を弦に巻き始める

    固定した先端を押さえながら、麻糸のボビン(糸巻き)側で弦の上から下へ、きつくかつ均等に巻いていきます。巻く向きは「矢番え位置の上から始め、下方向に巻いていく(または下から上へ)」のどちらでも可能ですが、自分が巻きやすい方向で統一することが重要です。巻くときは力を均等にかけ、各巻きが隙間なく密着するように心がけます。

    4
    必要な幅まで均等に巻く

    矢番え位置を中心に、上下それぞれ5〜10mm程度まで均等に巻きます。巻いている途中で「山(ふくらみ)」が均等に形成されているかを確認しながら進めます。片側だけ高くなっていたり、巻きが緩んでいたりする場合は、その部分をやり直すか修正します。

    5
    糸の末端を処理する

    巻き終わりの糸を弦の後ろ側で折り返し、最後の数巻きに糸の末端をくぐらせて固定します(いわゆる「玉結び」的な処理)。糸がほどけないようにしっかり締め込んだ後、はさみで余分な糸を切ります。

    6
    ボンドで固める

    木工用ボンドを中仕掛けの表面全体に薄く塗り、乾燥させます(30分〜1時間程度)。ボンドが乾くと麻糸が固まり、巻きがほどけにくくなります。ただしボンドを塗りすぎると中仕掛けが硬くなりすぎ、矢の筈が引っかかる原因になるため、薄く均等に塗ることが重要です。

    7
    乾燥後に太さを確認・調整する

    ボンドが完全に乾いた後、矢の筈を乗せて太さを確認します。細すぎる場合は上から追加で麻糸を巻いてボンドで固めます。太すぎる場合は爪楊枝やサンドペーパーで少しずつ削って調整します。最終確認は「矢を乗せて振っても落ちず、引っ張ると外せる」状態が基準です。

    弦輪(つるわ)の作り方

    弦を弓にかける際に使う「弦輪(つるわ)」も、中仕掛けと並んで自作する必要がある弓道の基本技術です。弦輪は弦の端にある輪(ループ)で、弓の弓末(末弭・本弭)に引っかけることで弦を弓に張る役割を持ちます。

    弦輪の種類

    本末弭(もとはず)の弦輪
    弓の下端(末弭側)にかかる固定式の輪。弓に弦を張る際に外れないよう、しっかりと弦に結び付けられている。市販の弦では最初から作られていることが多いが、自作する場合は麻糸による結び方を習得する必要がある。
    末弭(うらはず)側の弦輪
    弓の上端(本弭側)にかかる着脱式の輪。弦を張るときに本弭の弦輪に引っかけ、外すときに取り外す。弦の張り替え・弦の保管時にここを外す。弦輪の大きさ・形が弓の本弭のサイズに合っていることが重要。

    弦輪の作り方(末弭側)

    1
    弦の先端部分(輪を作る部分)を用意する

    弦の末端から15〜20cm程度を折り返して二重にし、輪を形成します。輪の大きさは弓の本弭(うらはず部分)に合わせて調整します。

    2
    折り返し部分に麻糸を巻く

    折り返した部分(二重になっている根元から5〜8cm程度)に麻糸をきつく均等に巻いていきます。中仕掛けの巻き方と同様に、隙間なく密着させながら巻きます。

    3
    末端処理とボンドで固定

    巻き終わりの処理をして糸がほどけないようにし、ボンドを薄く塗って乾燥させます。乾燥後に弓の本弭に引っかけてみて、サイズが合っているかを確認します。

    弦輪の強度確認は必須
    弦輪は弓を張る際に非常に大きな張力がかかります。巻きが甘い・ボンドが十分でないと、弦を張った瞬間に弦輪が外れ・切れる危険があります。初めて作った弦輪は、師範・経験者に必ず確認してもらい、「安全に使用できる品質か」を判断してもらってください。弦輪の破損は弓の破損・怪我につながる可能性があります。

    中仕掛けのよくある失敗と対処法

    失敗・問題 原因 対処法
    中仕掛けがすぐほどける 巻き方が甘い・ボンドが少ない・ボンドが乾く前に使用 巻き直し+ボンドを充分に塗り直す。乾燥時間を必ず守る(最低30分)
    矢が弦から落ちやすい(保持力不足) 中仕掛けが細すぎる 上から追加の麻糸を巻き、太さを増す。筈の溝幅と合っているか確認
    矢番えが硬い(引っかかる) 中仕掛けが太すぎる 爪楊枝や細かいサンドペーパーで表面を少しずつ削り、太さを調整
    中仕掛けの形が崩れた(片側が高い) 巻きが均一でない・弦が捻れている 一度全部解いて巻き直す。弦の捻れを直してから再作業
    使用中に中仕掛けが滑る(位置がずれる) 弦に対してボンドの付着が不十分 中仕掛けを解いて弦の表面に軽くやすりをかけてから(摩擦増加)再作業
    中仕掛けの位置が矢番え位置とずれている 最初の位置決めが不正確 解いて位置を確認してから作り直す。弓に弦を張った状態で矢を番えて正確な位置を確認する

    中仕掛けのメンテナンスと交換タイミング

    中仕掛けは消耗品です。使い続けると摩耗・ほつれが生じ、保持力が落ちてきます。以下のサインが出たら中仕掛けを作り直しましょう。

    • 麻糸がほつれてきた・繊維がばらけてきた
    • 矢番えした矢がすぐに落ちるようになった
    • 中仕掛けの山がつぶれて平らになった
    • 弦のその部分が変色・硬化してきた
    • 弦輪の太さが明らかに変化した(細くなった・太くなった)

    中仕掛けの交換頻度は使用量・環境によって異なりますが、概ね「弦1本の寿命(500〜2,000射程度)」に合わせて交換するのが目安です。弦を交換するタイミングで中仕掛けも一緒に作り直す習慣をつけておくと管理がしやすいです。

    道具の知識が射の精度を支える

    正しい道具管理が的中率を安定させる。
    弓道上達革命(増渕敦人 教士八段監修)

    中仕掛けを正しく作っても、射形に問題があれば的中は安定しません。道具の整備は「弓道上達の必要条件」ですが、それだけで十分ではありません。教士八段・増渕敦人師範が監修した「弓道上達革命」では、道具の知識と正しい射形を両輪として解説しています。中仕掛けや弦の管理とあわせて、射法の本質を映像で学ぶことで的中率が飛躍的に向上します。

    • 射法八節を道具の使い方と合わせて徹底解説
    • 弓具の正しい選び方・管理法が的中に与える影響を解説
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    税込29,700円 / 90日間全額返金保証

    中仕掛けに関するQ&A

    中仕掛けを作ったのですが、どれくらいの太さが正しいのか判断できません。
    最も確実な確認方法は「矢を実際に弦に番えてテストする」ことです。矢を番えた状態で弓を水平に向け(地面と平行)、矢が落ちなければ保持力はOKです。次に矢の筈を指で横から軽く押し(弦と矢を引き離す方向に)、スッと外れれば太さはOKです。この2つのテストで合格すれば適切な太さです。迷う場合は師範・先輩に確認してもらいましょう。
    ボンドを使わずに中仕掛けを作る方法はありますか?
    一時的な応急処置としてはボンドなしでも使えますが、長期的な使用には向きません。麻糸の摩擦だけでは稽古中にほどけるリスクがあります。木工用ボンド(速乾タイプ)は弓具店だけでなくホームセンターや100円ショップでも入手できるため、中仕掛け作成の際は必ず使用することをお勧めします。くすね(松脂)を塗る方法もありますが、くすねは「懸のメンテナンス」に使うものであり、中仕掛けの固定にはボンドが適しています。
    中仕掛けを自分で作るのが難しいです。最初は既製品を使っても大丈夫ですか?
    最初は既製品(中仕掛け付きの弦)を使うことは全く問題ありません。ただし中仕掛けを自分で作れるようになることは弓道の基本技能の一つです。入門から6ヶ月程度の段階で師範か先輩に「中仕掛けの作り方を教えてください」とお願いするのが最もスムーズな習得方法です。

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