「弓道の射距離は28mと聞いたけど、60mの競技もあるの?」「失礼ってどういう意味?」「試合で失格になる行為は?」——弓道のルールには初心者が戸惑う要素が多くあります。弓道の試合・審査に参加するためには、射距離・的の規格・採点方法・失礼の種類・競技形式を正確に知ることが必要です。本記事では弓道の射距離と競技規則について、初心者にもわかりやすく体系的に解説します。
弓道の基本射距離——近的と遠的
弓道の競技には「近的(きんてき)」と「遠的(えんてき)」の2種類があります。使用する的の大きさ・射距離・必要な道具がそれぞれ異なります。
- 的の直径:36cm(霞的・星的)
- 使用矢数:1立ち4本(2立ち8本)
- 一般的な道場での標準距離
- 段位審査も近的で実施
- 弓道人口の大多数が取り組む
- 的の直径:1m(大的)
- 点数制(1点・3点・5点・7点・9点)
- 専用の弓場が必要
- 全国大会・高段者の競技が多い
- 遠的弓・遠的矢が必要な場合も
近的と遠的の主な違い
| 項目 | 近的 | 遠的 |
|---|---|---|
| 射距離 | 28m | 60m |
| 的の直径 | 36cm(霞的・星的) | 1m(大的) |
| 採点方法 | 中たり(○)/外れ(✕)の2択 | 的中位置による点数制(1〜9点) |
| 使用矢 | 通常の矢 | 遠的専用矢(重め・長め)を使う場合も |
| 弓道場の必要条件 | 28m以上の射場 | 60m以上の広大な射場(屋外が多い) |
| 参加機会 | 一般道場・学校弓道部で日常的 | 専門的な弓道場・全国大会レベル |
採点方法——近的の競技ルール
弓道の近的競技は「的中数」で勝敗を決定します。4本または8本の矢を射り、的に当たった本数(的中数)を競います。同的中数の場合は「競射(きょうしゃ)」または「同的中」として特別なルールで順位を決定します。
遠的競技の採点方法
遠的の採点は近的と大きく異なり、的中位置によって異なる点数が与えられます。的の中心に近いほど高得点です。
| 的中位置 | 点数 | 備考 |
|---|---|---|
| 的の中心(金的) | 9点 | 最高得点 |
| 第2圏 | 7点 | |
| 第3圏 | 5点 | |
| 第4圏 | 3点 | |
| 的の外側(枠内) | 1点 | 的に触れていれば1点 |
| 的の外(中たらず) | 0点 |
失礼(しつれい)とは——弓道競技での反則行為
弓道の競技・審査において、ルール違反・作法違反は「失礼(しつれい)」と呼ばれます。失礼は「矢を的に当てることよりも、正しい射法・作法を守ること」を重視する弓道の精神を反映した概念です。
主な失礼の種類
礼の省略・誤り(礼のタイミングが間違っている)、歩き方の乱れ(走る・のしのし歩く)、弓・矢の不適切な扱い(弓の下弭を床につける、矢を人に向けるなど)、着装の乱れ(袴のずり落ち・道着の着崩れ)などが該当します。これらは射技と独立して評価される弓道の礼節に関わる失礼です。
矢が弓から落ちた(甲矢が射れなかった)場合の取り扱い、弦切れの際の対応の誤り、矢を射場外に飛ばした(矢道外に矢が飛んだ)場合などが射技に関わる失礼として扱われることがあります。
矢道外への射(矢が射場の安全区域外に飛んだ)、矢を人に向ける行為、射位外からの射などは安全に関わる重大な失礼であり、競技失格・審査失格の対象になります。安全に関わる行為は最も厳しく扱われます。
弦切れ(つるきれ)の扱い
競技中に弦が切れた場合の扱いは大会・道場によって異なりますが、一般的には「弦切れが起きた時点でその矢は失効(中てたとしてもカウントされない)」となります。予備の弦を常に準備し、弦切れに備えておくことが競技参加者の基本です。
弓道競技の形式——大会の種類と進め方
弓道の大会には様々な形式があります。主な競技形式を解説します。
一般的な競技形式(的中制)
最も一般的な競技形式は「的中制」です。全参加者が同じ矢数(4本または8本)を射り、的中数の多い順に順位を決定します。同点の場合は「競射(プレーオフ)」で決定します。
予選——全参加者が2立ち(8本)を射る
多くの大会で予選は2立ち(8本)で行われます。的中数の上位者が決勝に進出します。予選通過ラインは大会の規模・参加者数によって異なります。
決勝——上位進出者による1立ち(4本)ずつの競射
決勝では少人数による競射が行われます。1立ちずつ射を重ねて的中数を競い、最終的な順位を決定します。決勝では的中率だけでなく、体配の品格も観客・審判員の目に晒されます。
同点競射——同的中数の場合
同的中数の射手がいる場合は「競射(きょうしゃ)」を行います。1本ずつ交互に射り、中たり・外れの差がつくまで繰り返します。競射は精神力が試される真剣勝負です。
団体戦の形式
弓道の団体戦は、1チーム(多くの場合5名)の合計的中数で順位を争います。全日本学生弓道大会などでは5人立ちの団体戦が行われ、チームの連帯感と個人の安定した的中力が求められます。
審査における競技規則との関係
弓道の段位審査は純粋な競技ではありませんが、競技規則と同様の体配・作法が求められます。審査では「射技(体配・射法八節の完成度)」と「的中(矢の中たり)」が総合的に評価されます。
審査での重要なポイントは「的中しなくても品格ある射を見せること」です。的中数が少なくても射法・体配が完璧であれば合格する可能性があり、逆に的中していても体配が乱れていれば不合格になることもあります。これが弓道の段位審査が競技(試合)と根本的に異なる点です。
的の種類と規格——近的・遠的の的について詳しく
弓道の的にはいくつかの種類があり、競技・練習・用途によって使い分けられます。的の規格を正しく理解することは、試合・審査への準備として重要です。
近的で使われる的の種類
| 的の種類 | 直径 | 用途・特徴 |
|---|---|---|
| 霞的(かすみまと) | 36cm | 最も一般的。白地に同心円の黒い帯模様。的中位置がわかりやすい |
| 星的(ほしまと) | 36cm | 白地の中心に黒い星形。シンプルで視認しやすい |
| 六ツ矢的(むつやまと) | 36cm | 6本の矢を射る競技用。中心の色が異なる |
| 八ツ矢的(やつやまと) | 36cm | 8本の矢を射る競技用 |
| 大的(おおまと) | 100cm(1m) | 遠的・大的射会で使用。近的でも練習目的で使う場合あり |
的の素材と貼り替え
的は和紙(奉書紙など)で作られた消耗品です。矢が中たるたびに穴が開き、一定の使用後に貼り替えが必要です。道場では当番が的の貼り替えを担当することが多く、的の貼り方を覚えることも弓道の基礎知識の一つです。
競技・審査では的の状態が重要です。穴が大きすぎる的を使用すると、矢が「かすり的中」したかどうかの判定が難しくなるため、競技では定期的な的の貼り替えが必要です。
弓道場の構造と射場規格
弓道の射距離を理解するためには、弓道場の構造を知ることが重要です。弓道場の規格は全日本弓道連盟によって定められており、公式競技・審査が実施できる弓道場には厳格な規格があります。
弓道場の主要部位と名称
| 部位名 | 説明 |
|---|---|
| 射場(しゃじょう) | 弓を引く場所。床は板張りが標準。射位(立ち位置)が設けられている |
| 射位(しゃい) | 矢を射る際に立つ位置。的の中心まで28m(近的)の距離になるよう設定 |
| 本座(ほんざ) | 射位の後方に設けられる礼拝・待機の場所 |
| 矢道(やみち) | 射位から安土(あづち)まで続く矢の飛ぶ通路。安全管理上最重要のエリア |
| 安土(あづち) | 矢を受け止める土の山。的をこの安土に立てかけて使用する |
| 的場(まとば) | 安土と的が設置されるエリア |
近的道場の標準寸法
正式な近的道場では、射位から的の中心まで28m(一間的の場合は約4.5m増の場合も)の距離が確保されます。矢道幅は射手1名につき約91cm(3尺)が標準で、5人立ちの道場であれば矢道幅は約4.5m以上必要です。
また、矢道の奥行きには安全上の余裕が必要で、安土の後方にも矢が貫通しないよう十分な土壁・安全設備が設けられています。
競技参加時の服装・道具規定
大会・審査に参加する際には、服装・道具についても規定があります。規定を守った上で競技に臨むことが、弓道人としての基本姿勢です。
服装の規定
| 項目 | 規定内容 |
|---|---|
| 道着(どうぎ) | 白の弓道着が基本。大会によっては色道着が認められる場合も。清潔感があること |
| 袴(はかま) | 黒または紺の袴が標準。段位が上がると色の規定が緩和される場合あり |
| 足袋(たび) | 白足袋着用が基本。素足は不可の大会が多い |
| 弽(ゆがけ) | 三つ弽・四つ弽・諸弽のいずれも可。ただし道場・大会の規定に従う |
| 胸当て(むなあて) | 女性は着用が推奨(安全のため)。大会によっては必須 |
道具の規定
使用する弓・矢には素材・規格の制限は比較的少ないですが、以下の点に注意が必要です。
- 矢の長さ:自分の矢束(矢の適正な長さ)に合ったものを使用する。短すぎる矢は落矢の原因となる
- 弦:競技前に弦の状態を確認し、予備弦を必ず準備する
- 矢羽根:損傷した矢羽根の矢は飛行が不安定になるため、競技前に全矢を点検する
- 矢番(やつがい):矢の識別が必要なため、自分の矢には記名または目印を付ける
主要な弓道大会の種類
日本全国で様々な弓道大会が開催されています。大会の種類・レベル・参加資格を理解しておくことで、自分の目標設定がしやすくなります。
全国規模の主な大会
| 大会名 | 主催 | 概要 |
|---|---|---|
| 全日本弓道選手権大会 | 全日本弓道連盟 | 社会人・一般の最高峰大会。個人・団体の日本一を決める |
| 全国高等学校弓道大会(インターハイ) | 全国高体連弓道専門部 | 高校生の最高峰。個人・団体の全国優勝を競う |
| 全日本学生弓道選手権大会 | 全日本学生弓道連盟 | 大学生の最高峰大会 |
| 国民体育大会(国体)弓道 | 都道府県持ち回り | 都道府県代表選手による大会 |
| 全国弓道大会(天覧射会) | 全日本弓道連盟 | 天皇陛下天覧の格式高い大会 |
地方・ブロック大会
全国規模の大会以外にも、各都道府県弓道連盟主催の県大会、地域のブロック大会、高校・大学の学校対抗戦など様々な大会があります。初心者・中級者は地方大会への参加から経験を積み、段階的に大きな大会を目指していきます。
弓道競技ルールに関するQ&A
弓道のルールについて、よく寄せられる疑問にお答えします。
A. 近的では、矢が的の有効範囲(36cmの円の内側)に触れていれば中たりとなります。矢が的の外側の白い部分(枠外)に当たった場合は中たりになりません。判定が微妙な場合は、審判員が確認します。
A. 「並矢(なみや)」や「重ね矢(かさねや)」と呼ばれるケースです。矢道での事故に繋がる可能性があるため、射のタイミングは行司(運行係)の指示に従います。並矢が発生した場合、関係する矢の扱いは大会規則に従って判定されます。
A. 競技中の場外退出は原則として認められない大会が多いです。ただし体調不良などの緊急事態では役員に申し出ることで対応してもらえる場合があります。競技前の準備(トイレ・体調管理)は参加者自身の責任です。
A. 矢が安土に刺さらず跳ね返り、的に当たっていた場合の扱いは大会規則によって異なります。一般的には「的に矢が中たった状態で矢が止まっていること」が中たりの条件です。跳ね返りの場合は無効とする大会が多いです。
A. 特に初段・弐段の審査では、的中がなくても射法・体配の完成度が高ければ合格できる場合があります。高段位(五段以上)になるほど、射の完成度と的中の両方が求められる傾向が強まります。ただし審査の合否基準は審査員の総合判断によるため、的中があるほど安心です。
競技規則を理解した上で弓道を楽しむ
弓道の競技規則は複雑に見えますが、その根底には「正しい射法と礼節を守ること」というシンプルな原則があります。ルールを「制約」として見るのではなく「弓道の精神を守るためのガイドライン」として理解することで、弓道への理解と愛着が深まります。
大会・審査への参加を目標にするなら、ルールの理解と並行して射技・体配を高めることが最重要です。
ルールを知ったら、それを活かせる射技を磨こう
弓道上達革命(増渕敦人 教士八段監修)
競技規則・審査規程を理解した上で試合・審査に臨むためには、規則を遵守できる射技と体配が必要です。教士八段・増渕敦人師範監修の「弓道上達革命」は、試合・審査で評価される射法・体配を体系的に習得できる教材です。「なぜこの規則があるのか」という弓道の本質も含めて学べるため、技術だけでなく弓道への理解も深まります。
- 近的・遠的それぞれの射技の違いと対応法
- 審査で評価される射法八節と体配の完成度向上法
- 競射・プレーオフで平常心を保つ精神管理法
- 失礼を避ける——正しい体配・弓の扱い方の徹底解説
- 段位別審査での合格基準と具体的な対策
- 90日間全額返金保証付き——まず試してみることができます
税込29,700円 / 先着200本限定 / 90日間全額返金保証
※本記事はアフィリエイト広告を含みます。紹介している商品・サービスは編集部が独自の基準で選定しています。